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発達障害を抱える子どもと心をつなぐ ― プレイセラピーという時間

  • ロンドン心理相談室
  • 2025年12月17日
  • 読了時間: 4分

発達障害を抱える子どもたちは、言葉や行動で自分を表現するのが難しいことがあります。学校や家庭でのコミュニケーションがうまくいかないと、子どもは自分の気持ちを抑え込んだり、行動でしか示せなかったりします。しかし、それは「わかってもらえない心」を持っているからではありません。子どもは自分なりに世界を理解し、心の中で調整しようとしているのです。


精神分析的心理療法のひとつであるプレイセラピーは、こうした子どもの心の働きを尊重し、遊びを通して支える方法です。発達障害のある子どもにとって、言葉では難しい心の整

理を、安全な遊びの中で体験できる場を提供するのが大きな特徴です。



1. 発達障害と心の特性を理解する


発達障害のある子どもは、感覚の過敏さ、注意の偏り、社会的やり取りの難しさなど、さまざまな特性を持っています。こうした特性のため、日常生活の中で感じるストレスは少なくありません。


たとえば、予想外の出来事や変化に敏感で不安が強くなる、言葉で自分の思いを伝えることが難しい、感情のコントロールがしにくい、といった場面がよく見られます。こうしたとき、子どもは自分の感情を安全に整理する方法を求めています。


プレイセラピーは、まさにその「安全に心を扱う方法」を提供します。遊びという手段を通じて、子どもが自分の気持ちを整理し、表現する機会を持てるのです。



2. 遊びは“言葉の代わり”になる


発達障害のある子どもは、感情や経験を言語化するのが難しいことがあります。その代わりに、遊びを通して自分の世界を表現するのです。


例えば、次のような行動が見られます。


  • ブロックを並べる遊びで、特定のパターンを繰り返す

  • 人形やフィギュアを戦わせたり、特定の役割を演じさせたりする

  • 絵を描くときに、同じテーマや色を何度も使う


これらはすべて、子どもが自分の心を整理したり、不安を安全に体験したりしているサインです。大人から見れば単純に見える遊びでも、子どもにとっては心の動きを整理する大切な作業なのです。



3. 安全な関係の中で心が動く


プレイセラピーの大きな特徴は、子どもが安心して自分を表現できる関係性があることです。子どもは遊びを通して、自分の気持ちや葛藤を試します。そのとき、周囲の大人の反応が「評価」や「指導」に偏ると、子どもは心を閉ざしてしまいます。


プレイセラピストは、子どもの遊びを評価せず、急かさず、ただ見守ります。その静かな関わりが、子どもに「ここでは自分を出しても大丈夫」という安心感を与えます。


この安全な関係の中で、子どもは自分の感情を少しずつ整理し、自己理解や自己受容を体験していきます。



4. 遊びに現れる成長の兆し


発達障害のある子どもにとって、心の成長は目に見えにくいことがあります。しかし、プレイセラピーでは、遊びの変化としてその成長が見えることがあります。


たとえば、


  • 以前は同じ行動を繰り返していた遊びが、少しずつ新しい展開を見せる

  • 他者との協力を必要とする遊びに挑戦できる

  • 感情を表現する遊びが増え、抑えていた気持ちを外に出せるようになる


こうした小さな変化が積み重なることで、子どもは自己肯定感や安心感を少しずつ育んでいきます。大人が期待するような「すぐに言葉で説明できるようになる」ことではありません。遊びの中で体験し、心の柔軟性が増すことが、本当の成長の証なのです。



5. 保護者にとっての学び


プレイセラピーでは、子どものセラピーと並行してセラピスト(心理療法家)と保護者との振り返りのセッションが持たれます。それは子どもの内面を理解するだけでなく、保護者にとっても大切な学びの場となります。


  • 子どもが安心感を得やすい状況とは何か

  • 子どもが不安や葛藤を表現する方法

  • 家庭での関わり方や声かけのポイント


こうしたことを知ることで、家庭での関係性も少しずつ変わります。プレイセラピーは、子どもと保護者がお互いを理解し合うきっかけにもなるのです。



6. 最後に ― 心の居場所を作ることの大切さ


発達障害のある子どもは、自分の心を表現する手段が限られています。しかし、プレイセラピーは、遊びを通して子どもが心を整理し、安心して自己表現できる場所を提供します。

このプロセスを通して、子どもは自分の感情や思いを少しずつ受け止め、心の柔軟性を育てていきます。保護者もその過程を見守ることで、子どもとの関係を深め、家庭での安心感を増やすことができます。


子どもが遊びを通して語る心の声に耳を傾けること――それが、発達障害を抱える子どもにとって最も大切で、効果的な支えのひとつなのです。

 
 
 

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